Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Yoko Taniguchi

谷口 陽子

所属 放送大学
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対象、テーマ 被災、コミュニティ、社会変化と適応、「孤」
フィールド 日本(新潟県中越地方など)

左:山古志地域の雪景色

右:今も当時の残されている、震災によって水没した家屋

研究予定

本共同研究プロジェクトにおける私の研究課題は、「被災」により長い避難生活を経験した人びとの語りから、現代日本において「シングル」で生きること――ここでの「シングル」は「個」のみならず「孤」も含む広義の語として捉えたい――が持つ社会・文化的意味を再考することである。
近年度重なって発生した大規模災害は避難生活および日常への復帰期間を長期化させ、このことは個人に対し経済的にも精神的にも深刻な状況を強いるとともに、被災者を取り巻く家族・親族、およびその他様ざまな人間関係に急激な変容を余儀なくさせる。私は2004年10月23日の新潟県中越地震で被災した長岡市山古志地域(旧山古志村)を対象に2007年から被災体験の聞き取りを実施してきた。具体的には、震災発生直後から応急仮設住宅での避難生活を経て日常生活に復帰するまでの過程において、家族・親族、地域社会、行政、外部ボランティアがどのような関わり方をしてきたのかの調査を行ってきた。旧山古志村の人びとは震災後に全村民による村外避難に踏み切り、仮設住宅地で最長3年にわたる避難生活を送った人もいたが、私の調査のなかで見えてきたことは、仮設住宅地は集落ごとに区画化されコンパクトで多機能な一つのコミュニティ空間が形成されていたこと、そのなかでは旧来からの人間関係が維持や強化されたり復興支援に関わる様ざまな人たちを含みこんだ新たな人間関係が形成されていたこと、孤立する人を生みださない工夫がなされていたことなどであった。そのなかで浮き彫りになったことは、「被災」という事態によって、人が社会から孤立して生存することの困難さが逆照射される可能性があるということであった。本共同研究プロジェクトでの議論を通じ、「シングル」を考察する視点を広げたい。
 

 

おもな研究業績

2007,「現代日本社会の『親族』の認識と役割期待およびその変貌」『比較家
族史研究』(22) p. 34-64, 比較家族史学会.

2009, 「災害時の高齢者支援ネットワークの構築に関する考察」『研究成果報告集‐交通安全等・高齢者福祉‐』Vol.12,

2006年度研究助成, 財団法人三井住友海上福祉財団.

2010, 「新潟県中越地震で被災した山古志地域住民の居住環境の変化
と適応」pp.21~28『中越地震後の山古志への「帰村」に関する民俗学的研
究』(平成19年度~平成21年度科学研究費補助金基礎研究(C)課題番号
19520721研究成果報告書 研究代表者:陳玲).

2010, 「災害復興地における地域社会づくりの取り組み」『高齢者のウェ
ルビーイングとライフデザインの協働』鈴木七美・藤原久仁子・岩佐光広編
著, 御茶の水書房.

2011,「コンタクト・ゾーンとしての文化人類学的フィールド――占領期日本で実施された米国人人類学者の研究を中心に」pp.20-46,『コンタクト・ゾーンの人文学:Problematique/問題系』田中雅一・船山徹編, 晃洋書房

2011,  「第十二章 米国人人類学者への日本人研究者からの影響――一九三〇年代から一九六〇年代までの日本研究――」pp.495-516,『日本の人類学:植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』山路勝彦編著, ,関西学院大学出版会
 

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