Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Namie Tsujigami

辻上 奈美江

所属 高知女子大学 講師
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対象、テーマ テーマ:ジェンダー
フィールド サウジアラビア

左:サウジの男性陣

右:ショッピングモールで買い物を楽しむ女性

研究の予定

これまでサウディアラビアを中心とする湾岸諸国の比較ジェンダ―論を研究してきた。サウディアラビアは、アクセスが困難なフィールドである。入国ヴィザの入手が極めて困難である上に、男性研究者であれば当該国の女性に面会することが非常に難しい。このため、当該国におけるジェンダー問題は、常に関心の的でありつつも、研究そのものの蓄積が浅い。日本人では、1970年代は、外交官夫人としてサウディアラビアに滞在し、ベドウィン社会を調査した片倉もとこ氏がおられるが、現代の当該社会のジェンダー関係を研究しているのは日本人では私のみであろう。
 私は、在サウディ・アラビア・日本大使館専門調査員として2000年~2002年までの2年間サウディアラビアに滞在したほか、2005年には当時の駐英サウディ大使の招へいで訳2週間の調査を行った。さらに2007年には、博士論文の調査のため、国際交流基金の知的交流フェローシップで、キング・ファイサル・イスラーム研究センター客員研究員として受け入れていただいた。その際、サウディ人の家庭に3カ月間ホームステイをさせていただき、いわゆる「男女隔離」が厳しい当該社会においてサウディ人と衣食住をともにするという外国人研究者としては稀な経験を積むことができた。また2007年から、アラブ首長国連邦においても3回にわたる現地調査を実施している。
 本研究プロジェクトでは、現代のサウディアラビアのジェンダ―や家族について調査できる唯一の日本人研究者であることを生かして、貢献したい。
 サウディアラビアををはじめとする湾岸諸国の社会では、男女ともに既婚状態であることが奨励される。とりわけ、女性には男性の「保護者」の必要性が訴えられることが多く、婚資を目的とした少女の強制婚や、いわゆる「婚期を逃した」女性に用意された多様な一夫多妻の形態が認められてきた。だが、同時に都市では晩婚化が進行し、30歳代、40歳代の独身の男女がごくわずかであるが存在していることも否めない。彼ら・彼女らは、従来の家族規範のマイノリティとして、心理的・物質的障壁に直面しているのか、これらの障壁がある場合の男女差はどのようなものか、あるいはシングルを認めるような新たな価値体系が導入されつつあるのかといったことを、今後明らかにしていきたいと考えている。
 

 

主要研究業績等

2007 「ジェンダー秩序はいかにして構築されるか─サウジアラビアのウラマーによるファトワーの考察」『日本中東学会年報』vol23,no.1, pp.111-146.
2008 「調査者とリフレクシヴィティ─サウディアラビアを訪れた日本人女性の言説を題材に京都大学イスラーム地域研究センター『イスラーム世界研究』vol2, 238-249.
2009  「サウディ人男女の言説における家父長制と戦略」『日本中東学会年報』vol24, No.1, pp.103-138.
2009 「権力関係の再編に向けたサウディ人改革派女性の試み」関西アラブ研究会『アラブ・イスラム研究』第7号, pp17-29.
<著書>
【単著】
2011 『現代サウディアラビアのジェンダーと権力――フーコーの権力論に基づく言説分析』福村出版
【共著】
2007 『サウジアラビアを知るための65章』、明石書店。
2011 『UAEを知るための60章』、明石書店。
 

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