Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Kaoru Murakami

村上 薫

所属 アジア経済研究所
URL http://www.ide.go.jp/Japanese/Researchers/murakami_kaoru.html
対象、テーマ ジェンダー、貧困女性の生活
フィールド トルコ

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今後の研究予定

 

 これまでトルコにおける家族・ジェンダー規範について、(1)人々の日常生活および(2)国家の制度・政策という二つの水準に注目し、研究してきた。

2006-07年には、イスタンブールの貧困層が集中する地区でフィールドワークを行い、①ネオリベラリスト経済政策のもとで進行する貧困化が、家族、とくに行動の自由を制限された女性の生活戦略に及ぼす影響と、家族関係・ジェンダー関係の変容を調査した。また、②貧困救済のための公的扶助制度の実践を分析することにより、国家が貧困層の家族・ジェンダーに投影するイメージを明らかにし、そのようなイメージが貧困層の統治と深く関わっていることを明らかにしようとした。①と②からは、貧困化により、家族・親族の相互扶助という社会規範によってはもはや救済されず、孤立する個人(あるいはそのような個人の集合としての核家族世帯)が登場していること、一方では国家の貧困救済措置は彼らを「父たる国家」の庇護のもとにおくことにより、貧困層の統治に有効な家族的なシティズンシップ概念を再生産する可能性をもつことが伺われる。

本研究課題に取り組むにあたっては、国家がつくる家族イメージと、貧困層の家族・ジェンダー関係の再編が、相互にどのようにかかわっているのか、「夫のいない女性」(未婚、および夫と離別・死別した女性)に注目しつつ分析する。トルコ社会においては、経済的にも性的名誉を守るという意味で道徳的にも、女性は夫の庇護と管理のもとにあるべきとされる。「夫のいない女性」に注目するのは、彼女たちはそのような社会規範のもとで最も危うい存在と見なされるがゆえに、家族・ジェンダー関係の再編とそれがはらむ矛盾を、もっとも鮮明に体現すると予想されるためである。

本研究では、国家の家族イメージ、家族・ジェンダー関係の再編、および個人の戦略の相互関係を分析するにあたり、他国との比較の視点を採用することで、より深い分析が可能となるだろう。 

 

主な業績

 

    「特集にあたって トルコの「公共」再考」『アジア経済』第52巻第4号、2011年4月。

    「トルコの公的扶助と都市貧困層--「真の困窮者」をめぐる解釈の政治」『アジア経済』第52巻第4号、2011年4月。

    "Negotiating Social Assistance: The Case of the Urban Poor in Turkey", IDE discussion paper series No.291, 2011.

    「トルコ・マルマラ地震(1999年)——新しい住民運動の誕生」『アジ研ワールド・トレンド』2009年6月

    "Constructing Female Subject: Narratives on Family and Life Security among the Urban Poor in Turkey", IDE discussion paper series No.198, 2009 

    "Is There a Place for Women in the Nationalist Project? Feminist Insight in Japan and Turkey", Aysegul Mengi (der.) Demokrasi ve Politika: Hukuk Yonetim ve Iktisat Uzerine, Imge Kitabevi Yayinları, 2007.

    「トルコの『新しい貧困』問題」『現代の中東』第41号、2006年7月。

    「トルコの女性労働とナームス(性的名誉)規範」 加藤博編『性と文化』(イスラーム地域研究叢書第6巻)東京大学出版会、2005年。

    "Nation State, Family and Gender : Recent Studies in Japan and Turkey", Mayumi Murayama (ed.) Gender and Development: Japanese Experiences and Developing Countries, Palgrave Macmillan,2005.

    "'Burada Aile Ortami' Var : Yoksul Kadinlarin Emek Surecine Katilimi ve Namus Kavrami", Gonul Pultar ve Tahire Erman (der.), Turk(iye) Kulturleri, Tetragon Yayinlari, 2005.

    「トルコの児童福祉——制度の展開と理念の変化」『新興工業国における社会福祉:最低生活保障と家族福祉』日本貿易振興機構アジア経済研究所、2005年。

    「国民国家・家族・ジェンダー:日本とトルコの研究者たちの眼差し」 『アジ研ワールド・トレンド』2004年8月。

    「後発工業国における女性労働と社会政策」(編著)(研究双書)日本貿易振興会アジア経済研究所、2002年。

    「トルコ/開発体制とトルコ型近代家族」『アジ研ワールド・トレンド』2002年9月。

    「トルコの工場女性労働とジェンダー規範」『アジア経済』第40巻第5号、1999年5月。

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