Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

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Taeko Uesugi

上杉 妙子

所属 専修大学、筑波大学ほか非常勤講師
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対象、テーマ 軍隊とシングル、家族
フィールド 西欧、南アジア、日本、韓国など

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今後の研究予定

英国陸軍に雇用されるネパール人兵士(グルカ兵)の雇用政策や駐屯地における暮らし、家族生活について、英国及びブルネイ、ネパールをフィールドとして調査研究を実施してきた。また、15年戦争前後の日本社会の軍事化・脱軍事化と戦争未亡人の表象・地位との関わりについての文献研究も実施してきた。その過程で、軍隊が有能な兵士を獲得し軍務の効率性を高めるという政策的目的にもとづいて、兵士のアイデンティティやライフコース、家族生活等に介入し、必要とあれば変形しようとすることに注目するに至った。しかし、その一方で、福祉国家の崩壊や市民権の変容、家族の変化といった軍隊を取り巻く全体社会の変動や兵士自身の志向の多様化により、兵士のライフコースや婚姻、家族生活が必ずしも政策的に想定される範囲にとどまらないこともわかった。この共同研究においては、兵士の婚姻地位をめぐって展開する軍隊と兵士の相互作用について理論形成を行うことをめざして、通時的かつ共時的比較を行うとともに、応募者自身のフィールドにおけるデータの収集を同時平行的に進めていきたい。
今日、先進諸国において単身世帯の増加と核家族の減少などが報告され、家族がなくなりつつあるような危機感を煽り立てる指摘が見受けられる。しかしながら、非婚家族や混合家族、選択家族等の出現を見るならば、人々はなおも「家族」という枠組みを用いた絆を求めているのであり、家族は消滅しつつあるのではないと考えられる。むしろ、私たちが異性婚や血縁関係の有無、法的認知等を家族として認める要件として重視する家族観にとらわれているからこそ、家族が消滅しつつあるように見えるにすぎないのではないか。本共同研究がこのような硬直した家族観に風穴を開け、現代社会における人と人との結びつきをより適切に記述・分析するための理論を生み出す場となることが期待される。
 

 

主な業績

共著書
2002、山路勝彦・田中雅一(編)『植民地主義と人類学』西宮:関西学院大学出版会。
担当部分: 「英国陸軍グルカ旅団の宗教政策―現地人兵士と二つの国家―」、445-468ページ。
2005、原ゼミの会編『ジェンダーで開く地平』東京:文化書房博文社。
担当部分:「家事労働移民研究の現在―女性労働移民の主体性をめぐってー」、243-262ページ。
2007、椎野若菜編『やもめぐらし―寡婦の文化人類学』東京:明石書店。
担当部分:「戦争未亡人の物語と社会の軍事化・脱軍事化」、233-260ページ。
2007、H.Ishii, D.N. Gellner, and K. Nawa (eds.), Social Dynamics in Northern South Asia, Vol. 1: Nepalis Inside and Outside Nepal, New Delhi: Manohar. 2007.
担当部分:“Re-examining Transnationalism from Below and Transnationalism from Above:  British Gurkhas' Life Strategies and Employment Policies' in the Brigade of Gurkhas”  pp. 383-410.
2008、M. Tanaka ed. Armed Forces in East and South-east Asia: Studies in Anthropology and History.Kyoto: The Institute for Research in Humanities, Kyoto University.
担当部分:”Military Hinduism of the Brigade of Gurkhas, British Army: Cultural
Dynamics Accompanying Transnationality of the Military,” pp.34-54.
2009、田村やよひ編『看護の統合と実践③ 国際看護学』(新体系看護学全書)、メヂカルフレン社。
担当部分: 「第五章 異文化理解と国際看護活動 1.文化的存在としての人間の理解」、  126-143ページ
(印刷中)「移動の時代の市民権と軍務―電子版メディアに見る1997年以前グルカ兵の英国在留権取得をめぐる論争と対立―」、南真木人・石井溥編『マオイスト運動の台頭と変動するネパール(仮題)』明石書店
(印刷中)「トランスナショナルな社会領域と『生きられる文化』―英国陸軍グルカ旅団における軍事ヒンドゥー教―」、『後藤淑先生退官記念論文集』木耳社

論文(単著)
2000、「英国陸軍グルカ兵のダサイン―外国人兵士の軍隊文化と集団的アイデンティティの自己表象―」、『アジア・アフリカ言語文化研究』60号、113-158ページ。
2001、“Rhetoric and Ideology of the British Gurkhas' Cohesion: An Analysis of Gurkha     Dimension' and Dashain Festival”, 『立命館国際地域研究』18号、83-113ページ
2003、“Gurkha Children’s Schooling in Brunei.” 『現文研』(専修大学現代文化研究会)第79号。20-43ページ
2004、「越領土的国民国家と労働移民の生活戦略―英国陸軍における香港返還後のグルカ兵雇用政策の変更―」田中雅一責任編集『人文学報 90 特集 アジアの軍隊の歴史・人類学的研究:社会・文化的文脈における軍隊』(京都大学人文科学研究所)169-214ページ。
2012、上杉妙子、「マーシャル・レイスの身体による境界作業と民軍関係―旧英領インド陸軍
英国陸軍の現地人・外国人兵士の徴募・人員管理政策と通婚規制―」、『共同研究多族社会における宗教と文化』[査読なし]15号、宮城学院女子大学キリスト教文化研究所。

 

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