Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Sayaka Uemura

植村 清加

所属 東京国際大学 助教
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対象、テーマ -
フィールド フランス

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研究予定

私ははこれまでフランス・パリ地域を調査地とし、移民(主に北アフリカ地域)を方法論的な入口としながら、社会関係および生活空間を基点とした都市の再編に関する民族誌的研究を行ってきた。移動と家族そして、縁を視野に入れて当該地域をみた際、大きく以下の3点に注目したい。第一に、出稼ぎ、留学、単身赴任等により単身で流入してくる人々でさえ、必ずしも単独で独立して生活してはおらず、現地の単身者同士あるいはシングルマザーや子供が独立した後の空き部屋を有する人々との複数のアライアンスを結びながら日常生活を切り開いている点である。そのため、シングルに注目することは当該地域が備え持つ都市環境の特徴を明らかにすることにつながる。第二に、結婚を背景とするアライアンスと国家に関わる要件として、フランスにおける合法的な婚姻(市役所での結婚あるいはパックス)に平行して、人々の間で必要とされる婚姻(イスラム教をはじめ宗教的照準における婚姻や同棲)、そして配偶者および養子縁組に基づいて「つながり」を考慮して与えられる正規滞在資格を取り巻くやりとりを通じて、人の資源化と信用という両極からの社会関係の生成と調整実践を明らにしたい。そして第三に、これらの現状と都市生態の詳細を民族誌的に明らかにすることによって、越境するシングルたちにより結ばれるトランスナショナルなライフサイクルや移動性、しがらみとともに、彼らの存在を都市環境に組み込みながらつくられるセーフティネットのあり方、社会資源と社会生活のシェアリング実践を明らかにしたい。パリ地域では近年、自治体や市民団体を中心に、拡大家族や擬制的家族、地域のつながりの再生活動が実施されているが、人と人の「縁」を手がかりにすることで、改めてシングルと家族を問い直し、同時に個々の人々の越境的暮らしと生き様から、「新たな社会をつくる実践」を学ぶことができると考える。
 

 

おもな業績

【論文】
2004、「私たちの差異ある<つながり>のかたち——フランス・パリ郊外におけるマグレブ系移民第二世代の多民族的共同体——」、『文化人類学』、69巻2号、日本文化人類学会、2004年、271-291頁

2008、植村清加「市民社会を生きる人びと——フランス、マグレブ系移民の場合」、石塚道子・田沼幸子・冨山一郎編『ポスト・ユートピアの人類学』、人文書院、135-159頁

2009、「おやじといくストリート:パリのチュニジア人たちのカフェ通いから」、関根康正編『ストリートの人類学』上・下巻、国立民族学博物館調査報告80,81、国立民族学博物館、下巻(81)、367-403頁

近刊、「パリ郊外から生まれ出ようとするもの——今を生きる「記憶」のかたち」
森明子編『ヨーロッパ人類学の視座:ソシアルを問い直す』世界思想社
 

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