Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Taeko Udagawa

宇田川 妙子

所属 国立民族学博物館 教授 
URL http://www.minpaku.ac.jp/staff/udagawa/
対象、テーマ セクシュアリティ、ジェンダー
フィールド イタリア

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研究の予定

私はこれまで、イタリアを主なフィールドとして、女性およびジェンダ―にかんする研究を行い、イタリアに関しては寡婦や未婚女性についてもすでに調査研究を進めている。その過程で、女性およびジェンダ―の問題には、それがどんなものであっても家族とい文脈が無視できないが、なかでも、より周辺的な存在であるシングル女性に関しては、その関係性が如実に現れ、むしろシングル女性という問題自体が、イタリア社会の家族の構造を逆照射していることを具体的に明らかにした。それらの成果に関しては、別紙の業績にある通りである。
今後は、とくに以下の2点に絞って研究を進める予定である。一つ目は、女性だけでなく、イタリアにおけるさまざまな男性シングルを。とくに女性との差異に注目して調査研究する。もう一つは、歴史的な変遷(とくに近代国家成立以降と、ここ10数年の急激な社会変化)に配慮して、それぞれの時代の政治経済的な背景の中におけるシングルの実態と家族との関係を調査研究する。この2点の研究を続けることによって、シングル男女の生活からイタリア社会の家族を見直すという課題の考察をさらに深めていく。

親族関係に関する議論は、従来、生物学的定義を優先しがちな傾向にあり、多くの批判を経た現在でもなかなか脱することができていない。本研究も、その困難な課題に「縁」という言葉を用いて積極的に取り組もうとするものであると考える。すなわち、「縁」を(親族・非親族に分けることなく)社会関係一般を意味する概念として提示し、その一部に親族関係を位置づけることによって、親族関係を特権化することなく、他の社会関係や実践との関係の中で、その特徴をあらわにしていこうとする姿勢である。

 

主な業績

編著
2009  『多元的共生を求めて:<市民の社会>をつくる』(未来を拓く人文・社会科学14)東信堂、192頁。
2007  『ジェンダー人類学を読む:地域別・テーマ別基本文献レヴュー』(中谷文美と共編)、世界思想社。
2006 『東アジアからの人類学:国家・開発・市民』伊藤亞人先生記念論文集編集委員会(宇田川妙子・本田洋・中村淳)編 風響社。
論文
2011 宇田川妙子、「豊かな暮らしを求めて:イタリアのスローフードに学ぶ」、河合利光編『世界の食に学ぶ:国際化の比較食文化論』時潮社、205-228頁。
2008 「イタリアの食をめぐるいくつかの考察:イタリアの食の人類学序説として」『国立民族学博物館研究報告』33(1):1-38。
2008 「パラサイトシングルという問題」、小長谷有紀編『家族のデザイン』東信堂、112―114頁。
2007 「ヴェドヴァの「力」の背後にあるもの:イタリアの寡婦」椎野若菜編『やもめぐらし』明石書店、122-148頁。
2007 「地域の「門番」概念としてのジェンダー・セクシュアリティ:地中海ヨーロッパ」宇田川妙子・中谷文美編『ジェンダー人類学を読む:地域別・テーマ別基本文献レヴュー』世界思想社、1-17頁。
2007 「序章」(中谷文美と共著)宇田川妙子・中谷文美編『ジェンダー人類学を読む:地域別・テーマ別基本文献レヴュー』世界思想社、120-143頁。
2007 「終章」(中谷文美と共著)宇田川妙子・中谷文美編『ジェンダー人類学を読む:地域別・テーマ別基本文献レヴュー』世界思想社、356-375頁。
2006 「8章 ジェンダーとセクシュアリティ」綾部恒雄・桑山敬己編『よくわかる文化人類学』ミネルヴァ書房、62-71頁。
2006 「アイデンティティ概念の再構築の試み:イタリア人アイデンティティという事例とともに」『国立民族学博物館研究報告』30(4):455-492,国立民族学博物館。
2006 「イタリア社会研究と「市民社会」概念」伊藤亞人先生記念論文集編集委員会編『東アジアからの人類学:国家・開発・市民』pp.247-263,風響社。
2005 「イタリアの生殖医療の法制化にみる「生-権力」」上杉富之編『現代生殖医療:社会科学からのアプローチ』pp.159-180,世界思想社。
2005 「性をゆさぶる-トランスジェンダー」田中雅一、中谷文美編『ジェンダーで学ぶ文化人類学』世界思想社 230-250頁。
2004 「イタリアの名誉と男と性」森明子編『ヨーロッパ人類学』新曜社、46-65頁。
2004 「広場は政治に代われるか:イタリアの戸外生活再考」『国立民族学博物館研究報告』28巻3号、329-276頁。
2004 「もう一つの男女という問題:イタリアの〔ヘテロ〕セクシズム機制の再考を通して」『民族学研究』68巻3号、413-437頁。
2004 特集「ジェンダーの人類学:その困難からの展開」『民族学研究』68巻3号「序」369-371頁。
2003 「ジェンダーの人類学」綾部恒雄編『文化人類学のフロンティア』ミネルヴァ書房、157-185頁。 
2003 「「男の世界」の家族の絆」『月刊みんぱく』2003/3号、14-6頁。
2002 「「男性社会」は、いま」『民博通信』99号、4-7頁。

 
 

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