Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

member/メンバー

Erika Takahashi

高橋 絵里香

所属 日本学術振興会PD
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対象、テーマ 高齢者、介護
フィールド フィンランド

左:サービスハウスから歩行器を使って帰る 夏の公園で

右:-

研究概要とこれから

フィンランド南西部の自治体で、高齢者福祉とエイジングに関する人類学的調査・研究を行ってきました。仮に「群島町」と呼んでいるこの街は、スウェーデン系フィンランド人と呼ばれる少数派言語集団の暮らす二言語併用自治体です。言語的な多様性が地域福祉という一つのシステムの中にどのような差異を生じさせるのだろうか?という問題意識から、調査地に設定しました。2002年から2004年にかけて行ったフィールドワークでは、新たに開設されたデイサービスセンターの発展と在宅介護に着目し、実際にサービス提供の場に身を置くことで、観察とインタビューを行いました。
社会的な過程としての「老い」の問題を福祉制度のコンテクストにおいて記述することが研究の主な目的となります。それを通じて、北欧型福祉国家の成り立ちにみる北欧固有の地域の歴史的な在り様、そうした過去の「伝統」の大まかな反復によって、現在の地域福祉のサービスが創出されているものの、二つの言語集団という地域的な特性によって、サービスの需給状況に偏りが生じていく過程、そして、福祉国家の論理が近代的個人のあり方としての「自立」を高齢者に要求することで、エイジングと福祉制度が分かちがたく絡み付いていく過程を、解きほぐしていきたいと思います。
 また今後は、現在フィンランドの地方部でおきている自治体統合に伴う大きな組織改変と、それに伴う地域福祉の構図の変化についても、追っていく予定です。

 

 

主要業績

<論文>
2011「在宅」の思想―フィンランド西南部の地域福祉にみる市民社会の範域とエイジング
『国立民族学博物館研究報告』36(1) 35-76 [査読有り]
2011「道徳としての地域社会とエイジング―社会的なものの領域への語り口から―」『九州人類学会報』 (38) 79-84 [査読有り]
2009「福祉<社会>と人類学:二十世紀福祉思想にみるホリズム」『社会人類学年報』35: 33-56 [査読有り]
2009「老いを歩む:フィンランドの年金生活者達の合宿にみる身体変容への展望 (特集 メタモルフォーシスの人類学)」『文化人類学』74(3) 478-488 [査読有り]

<書籍>
2010 「ひとりで暮らし、ひとりで老いる―北欧型福祉国家の支える「個人」的生活」『「シングル」で生きる―人類学者のフィールドから』椎野若菜(編)、pp. 99-112、御茶の水書房  
2008「在宅介護―家族/社会という幸福を求めて」『人類学で世界をみる』p.3 - p.19、ミネルヴァ書房  
2005「老いることの民族誌――老人福祉」『現代人類学のプラクシス』pp.131-14、有斐閣     
2005「スウェーデン語系フィンランド人:国家形成への寄与と少数派の権利擁護にみるフィンランド近代化の歩みから」『講座 世界の先住民族 -ファーストピープルズの現在 第6巻 ヨーロッパ』pp.76-91、明石書店   
 

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