Single 「シングル」と家族/縁(えにし)の人類学的研究

2012年度第2回研究会(通算第9回目)

2012年7月21日 14:30〜19:30    
東京外大本郷サテライト 3F   

「女性のシングル・ライフを否定する暴力について考える——性暴力から名誉殺人まで」
田中雅一(京都大学)

コメンテイター:成定洋子(東京学芸大学)                    

<田中発表の要旨>

「女性のシングル・ライフを否定する暴力について考える  性暴力から名誉殺人まで」

 女性への暴力Violence against Women(VAW)について、昔からさまざまなかたちで議論されてきた。本報告では、VAWについて、つぎのような問題意識から分析を加えたい。
1)分類と比較。一言でVAWと言っても、ヘイト・クライム(hate crime憎悪犯罪)として理解される傾向のあるレイプと特殊文化的な現象とされるインドのサティー(寡婦殉死)やアフリカのFGM(女子割礼)は性格が 異なる。レイプと違って後者のふたつは当事者にとって暴力とみなされていないからだ。男たちは憎しみや偏見から敵の女性をレイプすることはあっても、サ ティーを強要したり、FGMを行うということはない。しかし、植民地支配の状況で、あるいは国際的な批判のもと、これらは「暴力」となった。さらに、今日 注目されている名誉殺人や硫酸を女性の顔にかけるといった非人間的な行為は、ヘイト・クライムとも言えるが、それだけでは説明できない。このようにVAW の内実は多様と思われるが、にもかかわらず、女性のシングル・ライフという視点から考えるとき に、共通する意図を認めることも可能と思われる。
時間があれば、以下の2点についても考えてみたい。
2)暴力一般との関係。わたしは、1998年に公刊された『暴力の文化人類学』以来、宗教儀礼における「暴力」についての分析を進めてきたが、VAWをより広い暴力の文脈に位置づける必要があると考える。
3)言説の暴力。非西欧社会でのVAWは、西欧社会や国際社会からVAWとみなされてはじめてVAWとなり、問題化する傾向にある。この点についても考えてみたい。


"Violence against Women's Single Life: From Rape to Honour-based Violence"
TANAKA,Masakazu (Kyoto Univ.)

Commentator
NARISADA, Yoko (Tokyo Gakugei Univ.)
                       

DATE : 2013.03.04

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